2023.12.07
「文化財建造物」である家屋の敷地の用に供されている宅地の相続税評価額
歴史的に重要な家屋や建造物等の、貴重な「文化財」は日本各地に多く存在しています。
このような建物が建っている宅地の相続税評価額も、算出方法が決められています。ではどのような方法で計算をしていくのでしょうか。
■国民的財産である文化財
文化財は日本の長い歴史の中で生まれ、今日まで守り伝えられてきた貴重な国民的財産です。そのため「文化財保護法」では文化財を、
「有形文化財」「無形文化財」「民俗文化財」「記念物」「文化的景観」及び「伝統的建造物群」と定義し、重要なものを国が指定・選定・登録して重点的に保護しています。
なお国税庁が定める「文化財建造物」は、有形文化財のうちの「重要文化財」「登録有形文化財」、伝統的建造物群にある「伝統的建造物」の3つとなっています。
「重要文化財」は有形文化財の中でも重要なものが指定され、さらに世界文化の見地から特に価値の高いものが「国宝」に指定され保護されています。
令和5年11月1日現在、重要文化財・国宝合計で全国に2,565件、5,406棟が存在しているが、個人所有のものは極めて少ないと思われます。
「登録有形文化財」は、「文化財登録制度」によって保存および活用の措置が特に必要とされた文化財建造物であり、令和5年11月1日現在、全国で13,761の建造物が登録されています。
代表的なものとして、寒河江市役所庁舎(山形県寒河江市)、小湊鉄道第一養老川橋梁(千葉県市原市)等が挙げられるが、こちらも重要文化財と同様に、個人所有のものはあまり無いものと思われます。
伝統的建造物は、「伝統的建造物群保存地区」内にある建造物です。城下町・宿場町・門前町等の歴史的な集落・町並みの保存が図られている地区内の建物で、令和5年11月1日現在、全国で126地区、約3万件の伝統的建造物及び環境物件が特定され保護されています。
代表的な地区として、福島県南会津町前沢(山村集落)、岐阜県美濃市美濃町(商家町)等が挙げられ、個人所有の建造物は、重要文化財や登録有形文化財よりは多いと考えられます。
・文化庁HP:文化財指定等の件数
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/shitei.html
■相続税評価額の算出方法
このような「文化財建造物」が建っている宅地の相続税評価額は、まずは通常の宅地と同様に評価額を計算した後に、文化財建造物の種類に応じた控除割合を掛けて算出します。
文化財建造物の種類 | 控除割合 |
重要文化財 | 0.7 |
登録有形文化財 | 0.3 |
伝統的建造物 | 0.3 |
・評価額:通常の相続税評価額×(1-控除割合)
これは「路線価地域」の宅地の評価方法となり、「倍率地域」にある宅地は「固定資産税評価額×国税庁が定める倍率」で算出します。
ただし、文化財建造物が建っている土地は固定資産税がかかっていない場合があり、その場合には状況が類似する付近の土地の固定資産税評価額を基として、固定資産税評価額に相当する額を算出した後に倍率を掛け、その額に控除割合を掛けて算出します。
・評価額(倍率方式):固定資産税評価額(相当額)×国税庁が定める倍率×(1-控除割合)
なお「文化財建造物」そのものの相続税評価の方法も、宅地の評価方法と同様の考え方で行い、
固定資産税がかかっている場合には「固定資産税評価額×(1-控除割合)」、かかっていない場合には「(文化財建造物の再建築価額-経過年数に応ずる減価の額)×0.7×(1-控除割合)」で算出します。
お伝えしたような「文化財建造物」や、それが建っている土地の評価を行うことは極めてレアケースだと思いますが、相続財産としての評価額は通常の財産とは違う方法で算出するということを、知識として覚えておいていただければ幸いです。
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