2024.01.17
農地・生産緑地と2022年問題? その2|越谷の土地の相続税評価の相談は澤田朗FP事務所
1991年に改正された生産緑地法が1992年に施行されました。ちょうど2022年以降から、生産緑地地区の指定から30年経過した農地が続出します。
その農地は保有者から各自治体へ買取の申し出ができますが、一斉に申し出があった場合、現実的には各自治体は財政的な理由等により買取が困難になることも想定されます。
その場合、自治体は他の農業従事者に取得をあっせんすることが求められていますが、取得希望者が現れない場合には、生産緑地としての義務や制限が解除されることになります。
■2021年までの、不動産の2022年問題の解消に向けた動き
また、500平米以上の土地を個人が購入するケースはあまり考えられず、不動産業者・開発業者が買い取り、結果、多くの宅地が市場に出回ることになり、不動産が供給過多となり不動産価格が大幅に下落するのではないか?というのが、不動産の「2022年問題」と言われていたものです。
各自治体としても、増加している空き家に加えて大規模な土地が市場に出回るということは、不動産価格の面からはもちろん、地域に緑地が無くなるという環境・景観上の問題や、大規模災害時の避難場所としての活用ができなくなるという公共的利用上の問題からも、できるだけ避けたい事態だと考えられます。
このような問題を回避するために、2017年2月に生産緑地法の一部改正を盛り込んだ「都市緑地法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され2017年6月と2018年4月に施行されました。各自治体はこの法改正を受けて条例を定め、改正内容に準拠して生産緑地を管理・保全等を行っていくことになりました。
■2017年に一部改正された「生産緑地法」
1.面積要件の引き下げ
生産緑地地区に指定されるために必要な「500平米以上」の要件が「300平米以上」に引き下げられ、これまで指定の対象とならなかった農地も指定が可能となりました。
また、生産緑地地区の一部(例えば他の所有者の農地)が買取の申し出をしたり、所有する農地の公共施設(道路等)への提供等によって地区全体の面積が500平米を下回ってしまうケースもあります。
このような場合、所有者は農業を続けたくても生産緑地地区が解除されてしまうことになっていたのですが、できるだけこのような事態を避ける目的もあり、面積要件が引き下げられました。
2.建築制限の緩和
従来は農業を営むために必要な施設、ビニールハウスや農機具の収納倉庫、休憩所などの設置のみが可能でしたが、農産物を製造・加工する施設や販売施設、農作物を主な材料としたレストランなど、収益性を高める施設の設置も可能となりました。
ただしこのような施設を設置した場合、該当の土地については固定資産税や相続税の優遇措置が受けられなくなりますので、どのくらいの収益が見込めるか、税負担がどれくらい増えるのか、などを考慮して設置の検討が必要です。
3.特定生産緑地制度の創設
生産緑地の「買取の申し出」に関連する制度です。買取の申し出ができる要件の一つに「生産緑地地区の指定日から30年経過したとき」がありますが、生産緑地の所有者の意向をもとに自治体が「特定生産緑地」に指定をすれば、この年数を10年ごとに延長できるようになりました。
指定された生産緑地については引き続き税の優遇を受けることができるため、買取の申し出件数の減少が見込めるほか、農地を保護し景観・防犯上のメリットも引き続き確保することが可能となります。
今まで生産緑地に指定されていなかった土地についても指定することが可能なため、従来よりも生産緑地が増える効果も見込めます。
■法改正による農地の位置付けの変化
このように2017年の改正では、1991年の改正で示された、農地は「宅地化すべきもの」という方向性から、都市に「あるべきもの」に変更されました。
農地を保全することによって地域の自然を守り、所有者の収益も確保も見込めます。また、時代背景によって制度そのものの位置づけや内容も180度方向転換されました。農地を保有している、農地を相続する予定がある人にとっては知っておくべき内容となります。
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